
第14回 フォークソノミー(集合知)の概念とは?
ポータルから検索エンジンへとWebのトラフィックの起点は移り、それにともないネット業界では大きなパワーシフトが起きていますが、その検索エンジンといえどもまだ完璧ではなく、Web上の情報をより効率的に活用するために、古くて新しいといえる概念に注目が集まっています。それがフォークソノミーです。
解説:小川 浩(フィードパス株式会社)
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[プロフィール]
お がわ・ひろし●1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業及び在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業するなど、アントレプレ ナーとして活躍。その後日立製作所を経てサイボウズにジョイン。feedpathの基本設計を考案し、現在に至る。ブロガーとしてSpeed Feed、「Web2.0BOOK」「ビジネスブログブック」シリーズなどの著作がある。
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フォークソノミーというネーミングの理由
Webの進化の過程を見てきたことでお分かりと思いますが、Web2.0時代におけるキラーアプリケーションは現時点では検索エンジンということに異論のある方はいないと思います。検索はGoogleの登場を契機に急速に進歩し始めて、今では探せないWebサイトは無いとさえ言えるほどになっています。
しかし、一見完璧に思えるGoogleにもまだ大きな欠点が存在しています。その一つは、検索できるのは基本的にWeb上の情報だけであるということです。そして、検索結果が妥当であるかどうかはユーザー自身の目でみて確かめるしかない、という事実です。だからこそGoogleは世界中の情報を「Webにアップロードする」ことにトライしはじめていますし、さまざまな検索技術の開発に余念がないのです。
Googleをもってしても埋めることができていない検索エンジンの盲点を補完するものとして、注目を浴びているのがソーシャルタギング、または単にタグ、という概念です。写真共有サイトである「Flickr.com(フリッカー)」と、Webサイトのブックマーク情報の共有サイトである「del.icio.us(デリシヤス)」の登場で有名になったタグとは、Web上の情報(テキストや画像など)に対して閲覧者が短いコメントのようなテキストを付与することで、情報を整理するという仕組みです。このコメントをタグと呼び、タグをつけることをタギングと呼んでいます。また、閲覧者全員でこのタグを共有するので、ソーシャルタギングというわけです。

タギング概念図
データインサイド戦略を使いこなせるか?
比較的短いキーワードをタグとして情報に付与していくことは簡単な作業です。いったん人間の目で見て分類しているので、タグとタグの関連性が社会的な意味を持つようになります。たとえば自動車の写真に「Car」と「車」とタグをつけた場合、二つのタグは関連性があると判断されます。このとき、英語と日本語という言語の違いは関係がなく、また、翻訳するまでもなく、曖昧ながらも両者には関係がある、と判断されるわけです。
このタグによる分類を、最近ではフォークソノミーと呼ぶようになっています。人々を意味するフォーク(Folk)による分類(タクソノミー)なので、フォークソノミーと命名されたわけです。

フォークソノミー(集合知)の概念図
Yahoo!のディレクトリとの違いは?
フォークソノミーは、一見 Yahoo!が行ってきたWebサイトのディレクトリ(目次)作りと、似ているように思えますが、実のところまったく別物といっていい概念です。
ディレクトリが特定少人数のプロフェッショナルによる分類であるのに対して、フォークソノミーは不特定多数によるオープンな分類になります。つまり、Web2.0の成立条件の一つとして掲げた、Webに参加するユーザー数の増大という背景があって初めて意味を成す考え方です。より多くの人が、より多くの情報に対してタグという小さなデータを付与することで、自律的に情報が整理され、データベースとして成長していくわけです。
この意味で、フォークソノミーは、Web2.0に社会学的な響きを持たせている大きな特徴であるといえるでしょう。
■今回のポイント
Web2.0はテクノロジートレンドではありますが、Webへの参加者が急増したことによって本来Webが有している多くの特徴が顕在化してきた世界を表現しています。フォークソノミーとは、世界中の多くの人々の小さな知恵を結びつけて、精緻なデータベースを成立させていく、非常に有意義な考え方です。
次回につづく