
第10回:軽量なUI、軽量な開発モデル、軽量なビジネスモデル
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[プロフィール] お がわ・ひろし●1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業及び在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業するなど、アントレプレ ナーとして活躍。その後日立製作所を経てサイボウズにジョイン。feedpathの基本設計を考案し、現在に至る。ブロガーとしてSpeed Feed、「Web2.0BOOK」「ビジネスブログブック」シリーズなどの著作がある。 |
軽いことを尊ぶ基本的思考回路を育成
まず軽量なUI(ユーザーインターフェイス)について述べます。Web2.0におけるUIの代表格と言えばAjaxです。Google Mapsも衝撃的ではありましたが、やはりGmailの登場こそが、WebアプリケーションにAjaxをどう利用すれば有効となるのかを明確に示した最大のイベントでした。
Gmailとは、無料のWebメールです。従来のHotmailなどと同様に、ブラウザー上で利用できるソフトウェアであり、従ってどこからでも、誰のPC上からでもアクセスしてメールの送受信を行えるサービスです。しかし、Hotmailと大きく異なるのは、その操作性といわれています。いわゆるAjaxと呼ばれる手法が初めて本格的に用いられたGmailは、MS Outlookなどのクライアントソフトに匹敵するほど快適な操作性を備えており、それまでのWebメールを一気に時代遅れにしてしまったのです。
Ajaxは「Asymmetric JavaScript and XML」の略です。Ajaxは一つの技術ではなく、JavaScriptやXHTML、CSS(スタイルシート)、XMLなどのオープンかつ比較的枯れた技術の組み合わせです。だからテクノロジーというよりも、テクニックといったほうがいいでしょう。だから、誰でも学ぶことができる技術であり、FLASHなどと異なり、PCに何かのアプリケーションをダウンロードする必要がないという点で、気軽さを備えているのです。また、蛇足ですが、Ajaxを名付けたのはGoogleではなく、AdaptivePath というWebコンサルティング会社です。この点勘違いされている方も多いと思います。
さて、話を戻しましょう。Web2.0はWebへの参加者が急速に増えたことによる変化と考えてもいいでしょう。ITリテラシーの高くないユーザーが増えたことで、Webアプリはいっそう簡単に使えるようにならなくてはならず、それがAjaxのような軽快なUI開発テクニックの台頭につながっているともいえるのではないでしょうか。
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Web2.0的軽量な開発モデル
Googleにおいては、すべてのエンジニアに対して、ユニークなサービスを開発するために、強制的に業務時間の20%を充てることを義務づけていることは有名な話です。事実、GoogleのSNSサービスであるOrkutはこの"20% ルール"の賜物ですし、Gmailもたった一人のプログラマーを中心とした少数チームで開発されたといいます。
マッシュ アップにしても、Ajaxにしても、そしてLAMPというオープンソース系開発環境にしても、すべて安くて軽い技術の組み合わせです。
最後にビジネスモデルですが、"軽量"とはどういう意味かというと、これは データを商品にするということを意味していると解釈できます。たとえばiTMSは音楽というデータを販売しており、在庫や輸送に関わるコストを一切かけていません。Appleはドル箱であるiPodの製品設計とデザインだけを自身で行い、製造に関しては海外企業の工場に発注しています。ハードウェアに置いても固定費を多く持たないことは重要なことです。
その点、Amazon.comは実際の商品在庫を持ち、物流を管理しなければならないという点で、Web2.0的であるとはいいがたいかもしれません。商品を購入するための多大な資金や、在庫金利などのコストをかけなくてはならないことは、ビジネスモデル上は"重い"ということになります。
Googleはこの点において、非常に徹底しています。サーバーは高価なものを買わず、Linuxをベースに自社で開発したOSを安価なサーバーに載せて使っていますし、そのうえでWebを介して検索エンジンというコアテクノロジーをベースとした、さまざまなサービスを提供することに集中し、そのトラフィックを広告という収益源に変えるというビジネスモデルに集中しています。
最近ではGSA(Google Search Appliance)という企業内検索エンジンのアプライアンスサーバー(一つのアプリケーションの実行専用サーバー)の販売にも力を入れ始めていますが、このGSAでさえ、Ex-Works(工場渡し)といって、取扱商社に対して自社の倉庫で受け渡しをして、自分では輸送も輸出もしないという徹底ぶりで、軽量ビジネスモデルのポリシーを貫いているのです。
■今回のポイント





